地域の人達みんなで見送ることができた祖母の葬儀

近頃は「○○斎場」などの名前が付いた葬儀場でお葬式をするのが当たり前になっていますが、私が子供の頃は近くのお寺や地域にある会館で行うのが普通でした。
私が生まれる前から家族の一員として同居していた祖母が亡くなった時、斎場を利用せずに近くの町内会館で葬儀を行うことになりました。まず、町内会の役員をしていた時に父が懇意にしていた葬儀屋さんに諸々の手配をお願いをしました。ごく親しい人だけ呼んで小さなお葬式で充分だというのが生前の祖母の口癖でもあったので、葬儀委員長なども立てずに行うことになったのです。後は祖母の宗派のお坊さんに来てもらうことになり、供花や供物の注文をして準備は整いました。
通夜、告別式ともに想像以上の参列客がありました。遠くから泊まりで来てくれた身内もいましたが、多くは長く住み慣れた地域の方々でした。祖母は着物にもんぺ姿でいつも大きな声で浜言葉を話していたため、知らない人はいないくらいの名物ばあちゃんでした。美味しい漬物を漬けると言って近所の若い奥さん達が習いに来たこともありました。庭の草取りをしながら行き交う人達との会話を楽しむ姿が今でも思い出されます。そんな歴史もあって、祖母を見送りに来てくれた人達が沢山いたのです。
会場になった町内会館は我が家から徒歩5、6分のところにありました。これがもし少し離れたところにある斎場であれば、地元の方々がこんなにも足を運んでくれなかったのではないだろうかと考えました。確かに斎場は綺麗で設備も整っていて宿泊にも不自由しません。また働いているスタッフが全て段取りを仕切ってくれますから、まるで結婚式のように時間通りに葬儀が執り行われます。しかし、何故か大概の人の葬儀が型どおりのお決まりのパターンをなぞっているような気がしてならないのは私だけでしょうか。
棺の祖母にお別れをする時は、会館にいながら自宅にいるような気持ちで花を手向けることが出来ました。司会や葬儀委員長がいない代わりに父が挨拶をしたのですが、家族からの言葉ということで参列者の方々の心にも響くものがあったと思います。もちろん、私にとっても忘れられない葬儀になりました。
これからどんどん小規模な葬儀が増えてくる時代になるでしょう。家族葬を行う小さな会場も沢山見かけるようになりましたが、また以前のようにお寺や会館で行いたいという要望も出てくるのではないかという気がします。立派な斎場も結構ですが、どこででも望むような「お見送り」を叶えてくれる葬儀屋さんが再び活躍する世の中になって欲しいと思いました。

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